東大ノート (救急医療)

1201 救急医療

●演習

「宮本 35歳」として厚生労働省<課長補佐>に着任、とする
 →「小児救急を救え!」 毎日新聞 朝刊 社説にのってしまった
 →急いで手を考えろ

  課長補佐とは… 大きな権限がある


●矢作先生 東大 救急

 現在の救急医療の実態

 363の二次医療圏
 小児科医による救急対応のできない医療圏が220
 
 これは、小児科医の不足 …ではない
 
 アメリカより日本の小児科医はやや多い
 
 →分散している… かかりつけ医…
 
 救急と一般疾患の違い
 
 病院選定 : 緊急度と場所 vs 熟考可能
 要求される力: 病院の総合力 vs 科の力


将来の医療

 かかりつけ医がしっかり受け止める
 そこを抜けたとき救急に
  ある程度直ったら、慢性期or家庭医or家にいく
 
今の救急
 大きく 二つ

 ①救急告示病院(東京オリンピック以降)
 
 ②それ以降におきた
  暴漢に襲われた女性を助けた男性が刺され、たらいまわしされなくなった
   (S49)
 →S52  初期→二次→三次

 日本の救急は外傷から始まった
   初期:入院を必要としない
   二次:入院を必要とする
   三次:生命の危機

 日本の病院の半分は、二次救急
   非常に多い!!!

入院医療をする施設と医師の比
 オランダ…150人
 アメリカ…100人
 イギリス…50人
 日本…8人    …アフリカと変わらない!


二次救急の病院のベッド
 300床以下がほとんど(少ない…)
 →医者の数が非常に少なくなる


普通の病院 2%が救急から入ってくる
救急病院 4%が救急から

2次救急の医師の数
  27人/施設

日本は病床が多く、医師が少ない

二次を標榜していても、
 内科はほとんどあるが、
  小児科50%、精神科20%、脳神経50%
   実際に対応できるのは、さらにその半分!!!


小児科医
 施設ごとにわると、3人に届かない
  →当直できない!!!

小児科医師が10人にみたない医療圏は200ある

cf 病院医師の平均月収は100万 職員一人当たり 0.101
   (大学病院は、50万)
  一般診療所は250万  職員一人当たり 0.130

★二次救急の統合
 労働安全のための基準
    などなど

・家庭医のあるべき姿
  国民の健康管理は家庭医がするべき

 「かかりつけ医はいますか?」
   国民の2/3にはいる
   が、病院に84%のそのかかりつけ医はいる!!!

 往診を受けている診療所(全体の1/5くらい)でも、
 年に平均で10回しかしていない
 

●信友先生

 <実際>
  現実 = 政策(←認識&知識) x 政治(←認識&見識)
  
  今まで(貧しい時代)は、中央集権・行政リードで行っていた
 
  が、多様なコントロールが必要な時代に
  「リーダーシップを行政にまかせていいのか?」
  
  →現場主導で政策をつくっている信友教室

 そのために…
 
 ● テーマの位置づけ 【認識】
 #1 テーマの緊急性
    (すぐに動くのか、年度末に手をつけるのか、教育のレベルでかえるか)
 #2 重大性
    (病気の多さ、質(人格荒廃))
 #3 現実性・整合性
    (予算)・(制度・財源の中でできるのか、法律の中でできるのか)
 #4 世論
    (国民が後押ししてくれるのか)

 ●責任配分  【知識】
   ステークホルダーにだれを想定するのか

 ●リーダーシップ 【見識】
   (リーダーにリーダーシップはゆだねていいの?)
   (どうつくる?)

日本の病院は医者がつくった

欧米は、地域・国家がつくった


◆質問◆

◆行政官として…
 小児救急は、長期的に考えるべき…
 
→「小児科医は少ない!
  だから小児救急はたいへんだ!」
 その認識は間違えていると、国民は意外感を持ってうけとめた
 
 という設定
 
 ベッドで医療をコントロールしている今
 「マンパワーで医療はコントロールすべき」と考えている信友

◆長期的視点で統廃合だと、
 お金の話が…
 明日までの緊急性があるのか?

→緊急性があると、局長が判断した という設定

◆小児科医の絶対数の不足?
 日本の小児科医は、年齢比と男女比は?

→小児科も、構成はふつうの医師から極端には変わらないと認識している

産婦人科は非常に年齢高いが。

◆受け手の受診回数の差
  日米で違うだろう

→100人の子供がいれば半分は救急診療をうけると考えられている



●演習 各グループ
「35歳 着任したばかりの事務官」
「夜9時に、局議をいれてくれといわれた」
「朝10時に案を提出しないといけない」


◆Aグループノート

厚生省
短期的:診療報酬↑

長期:小児科医を増やそうとしている 研修↑

中:内科医達が自身をもってできるように
  若手に対する小児科研修

緊急:センターをつくり、
 当番を決めて、医者をおく
 輪番制。
   cf)開業医の場所に輪番制にすると、破綻


電話相談システム
 

救急と併設した夜間外来
「小児救急と一般救急は違う」

地域にセンターを作る


  ◆◆◆◆

◆Eチーム

論説への認識
 「これは事実」
 現実は
  ・意思の働く場所・地域を強制できない
  ・個々の病院が小児科を作るのも、自由
  →病院機能の集中や統廃合などできていない
 
 ⇒県立小児医療センターなどの救急医療を充実させる
 
  国民の声を聞く機会をつくる
   コンセンサスを得るため
 
  啓蒙活動を行う


→なぜこの時期に、定例でない記者会見をつくるのか、呈示すべき

…不安を与えないために説明した


◆Dチーム

前提
 この記事の内容をみとめる

問題
 小児科に夜間かかるニーズが増えている
   …需要が追いついていない

 家庭医が24時間対応できるような体制を
  家庭医がまずトリアージ
  夜間診療していない家庭医…
    今後インセンティブをつけていこう

→なぜ今の時期に、不定期な記者会見を行ったのか

…実際にはこう動いていると表現した


◆Cチーム

 救急情報の集中を行う
   初期〜3次の振り分けを行う
 国民への教育
 モデルケースを開示(このような小児救急があるべきだ)
 小児科医に代わる意思の再教育システム


…市民への安心感を与えるための現状説明


◆Bチーム

 小児救急が確立されていない220の医療圏で…
 
 今ある小児救急病院の当番制を進め、診療報酬を改定すべき

…(↑チームとおなじ)

◆Aチーム

「積極的に小児救急に取り組むべし」

短期
・小児夜間外来(インセンティブつける)
・ひとつの病院を救急センター化
  輪番制で小児科医を  (開業医も含む。休業医も)
・市町村レベルで電話相談(軽症患者を対象外に)

中期
・他の診療科医師に小児科研修
自治体レベルで母親教育(保育園などで)

長期
・小児科医を多く育てる
・国民もいれた審議会をつくる


…具体的なものをだして、安心感
 国民の意見を聞きながら検討を重ねていく



→→「お任せくださいというメッセージを国民に提示したのではないか?」
 社説には、世論が書いてある
 世論が書いてある、といえば、財務省にも説得力がある


改めて問う
「なんで、緊急に動いたのか」

…Eグループ

憲法で国民の生存権を守る義務を国家は持っている
医師は、自由開業医制も持っている
 医師の使命と自由の両立には、行政主導では限界がある

 国民の力をかりる!

 「マンパワーがあるにも関わらず、行政ではどうにもできなかった」
 それが、緊急性のある社説!


→Cは「小児科<医>だけで見るべきなのか」と問いかけた?

…Cチーム

 親御さんたちへの安心感を与える
 

→B 読み上げるものをまとめたのは、上手なやり方
 すぐに記者会見をするのに、便利
 現場でやられているかたち

…発表の必要性のためにです(汗

→A なんで短期中期長期にどうしてわけたの?
  もっともっと、明日からやるものを呈示すべき
  新しい動きがでましたよ、と呈示することで信頼が得られる


コメント
・平子

緊急の記者会見
 現場の人間なら、止める
 十分な検討がされているのかしないのか、がポイント
 
 今、ニーズが変わってきているという問題の捉え方大切

・山口

 所詮、小児科医は大変、から脱し切れていない
 小児科医をどれだけ甘やかすのか?
 
 今ある小児科医をどう有効活用するのか、見えてこない
 
 国民教育 自己防衛
  もっとそこに切り込むべき
  「なんとなく不安」をどう減らしていくか
 
 家庭医学
  女性医学に次ぐ、大きなテーマ

・迫井

ふつう、意図をはっきりしてください、とまず聞く。
無駄な作業になってしまう可能性があるから

行政がやりたいことを追い風と捕らえてやるべき
有力な新聞・有力な書き手
 統廃合がどうしてできないのかという現状分析がもっとあるべき

「緊急記者会見」「明日までにこれをやれ」
 政治サイドとの連携を分析せずに動くことは現実的にはない


・三宅

本当の緊急性があるSARSとかであれば動きやすいが…
何ができるかできないかを決めて、打ち出していくしかない

検討会を何度か開いて下ごしらえするのが普通

できたことを自慢げにいうのが、役人
できないことは黙っているのが、役人

大臣・政治家にはなす、であれば、役人も無責任に発言できる
局長レベルでは、錦の御旗は掲げないので、無責任に発言でいない



<信友>
既存のものを学ぶ、ではない
これからは、どう考えどう動くか、を感じ取ってもらいたかった

病院の統廃合
 別にそこにこだわらない方法もある


◆質問

「局長が、これが利用できる、で政治というものは動くのか?
 下から上がったものを発表するのが政治でないのか?」

→局長もいろいろある

「何が狙いだったのか、分かりにくい」

→リーダーシップを考えたかった
 リーダーは、行政にいるというむかしがあった

「意思決定
 このシミュレーションは、政治家とのやり取りをとっぱらっているので分かりにくい
 リーダーシップは、組織の理論
 与えられた権限の中で動けるもの
 ただ、認められた範囲の中で逃げるのか、前に進むのか、を判断する
 実際の局長も、きちんと打ち出し、下に指示を出す。」

→これから局長・役人はどう動くべきかとみなさんに考えてほしかった

「自分が局長であったらば、
 社説は、自然に出たわけではない
 論説員や解説員に知恵をつけて、社説に書いてもらう
 
 それを、『やっと出たか』と思いながら、動く」

「マスコミの現場
 現場で起きている事実を積み重ねて、物事を動かす
 局長の鶴の一声、というわけでなく、持ちつもたれつ、がある」

→様々な局長
 自分、予防接種訴訟で、国の代理人としてでた
 
 予防接種は、社会防御のためにブースター効果のある老人小児を狙う
 だから、連戦連敗だった
 それの知識をまとめて、動かした
 
「今回のケースは、ありうる
 実際にあった話
 
 岩手県 たらいまわしでなくなった事例
 社説をぱっとだして、小児の診療報酬がことしかわったという認識がある」

→三宅

 救急救命士法。ニュースの森の影響が大きかった
  救急車で治療するパラメディカルについて毎日放送した。
  議論が動いていった

 世論。なかなかつかめないから、マスコミを世論とみなし、力とみなし、動いている




「全国的な展開を、みなさん考えただろう
 地域医療計画。なぜ充実しないのか。
 地方の問題。地方によって特色が違う」
 
→病床規制からマンパワーの規制に変えたほうが、国民にきちんと医療を提供できる


「小児科医療 大したことなくても保健所に預けて、夜病院に行く
 『次の日仕事に行くために熱下げて頂戴』
 田舎であれば、老人が『水を飲ませておけばいい』とかですむ
 ニーズの地区による違い」

→大分の、黒字の小児医療
 数字でものごとをみた
 年収1000万の医者を何人雇えるのか、地域住民・医師会と一緒に作り上げた

 それが、これからのやり方であるはず


「小児。カウンセリングなど考えていかないと」

「僻地医療」

→地域にあった保険をつくるべき

「数字を見る それは大切
 千葉県 とおがね 糖尿病専門医を数えた 2人しかいなかった!
 糖尿病療養指導士を一生懸命育てている
 それでもたらないので、薬剤師を使っている
 
 最初は、壊疽の数を数え、潜在的な数をすべて出していた
 
 数字は、重要であることを実感した」


●矢作先生

20分の中でどこに話を絞り、データを出すのか、難しかった…

本当は言いたかったこと。
昔は、開業医も含めて非常に良く働いていた
が、今は1/10の小児科医しか救急をしていない

平均年齢は、47→48にしかあがっていない

基本的に小児は、子供が減ったとしても件数は下がっていない

●信友先生

地域が主導でいくべき
カネがおりない、政策が降りてこない、はだめ
地域が数字をだせるように、システムを用意すべき
そのようなシステムを、国は用意するべき

●浜辺先生 墨東

お上がやっている全国一律の保険点数は、現場では問題になっている
「おらが地域の救急医療はこうしたいんだ」
で、地域医療を形作ってほしい。それが救急の形になっていくんだろう


●信友先生

感じて考えることを楽しんでください