昨日の東大医療政策人材養成講座第3回のノート

今年10月からはじまった東大の医療政策人材養成講座に、僕は通っている。週一回、水曜日にある。
昨日は台風の中、第三回があった。
そのノートを流してみる。

                • -

「患者主体の医療」

<本日の論点>
・患者政治活動団体の存在の重要性は?
  「数」は重要?
・団体の、医療政策設定プロセスにおける関与
   かかわる?
   プロに任せる?
   批判する?
   一緒にやる?
・対等に議論できるステークホルダーになるためには?
  他と同等の情報量がもてればいい?
  患者団体の対立を克服すべき? どうすれば克服できる?
  特定の疾患にこだわることから脱却できるか?



<山崎文昭先生>

日本がん患者協議会
…「医療を良くする」という活動を、ガンにこだわらずしている

今朝の新聞
 日本道路公団
  集金業務をファミリーに9割受注させていた

 90年代からそうだが、お金をつかっても、日本経済良くならない…
 これまでのやりかた、お上におまかせ、では、もう解決しない!!

医療もそう。
適応外の薬の多さ…
ガン治療薬は、多剤併用 が基本
世界標準の知識を知っている現場ドクターは、保険で認められていないものもつかってしまう。

(企業の弁)
保険外の薬、世界のスタンダードは、安くて臨床試験する気が起きない

国は、書類だけで通すようになっている
だが、
厚生労働省は、データを集めて、といってくる
→基準がないと、怖くてもっていけない

厚生労働省は、
とにかくもってこい

いろいろ頑張った…

やっと!
委員会できた 適応外を適応化!!

(昔の交渉のとき)
「世界で当たり前のものがどうして使えないのですか?」
(厚生省)
「世界、はいろんな国があるよ。承認された国はあるだろうが、『世界標準』はありえない」
(議員)
「世界ってどんな国なんですか?」「いろんな国があるよ。日本よりレベルの低い国もあるでしょう。」

⇒今回のテーマ 「医療は患者がかえられるか?」

…「医療」を定義しないといけないだろう

患者というのは、素人。
専門家に任せなきゃいけないこともたくさんある…

→「患者さんが満足できる医療」と定義
  そこでなら、患者も口をだせる!!

「自分たちは頑張っているんだから患者さんはだまっていろ」という医者

三権分立が政治にはある。
が、医療提供者、行政、患者、という三者で、患者が弱い
患者も、利用者として、<大きな枠の中>で、議論に参加できるべき

→「緩やかなネットワークづくり」

患者会。対立がある…
ひとつの疾患にお金が集まってしまうとか…

いい医療については、共同できるべき。

行政は、与えられた仕事をこなす能力は、抜群に高い
だが、どういう理念を持って、は、国民が決めるべき
 患者さんが集まって、国民の世論となれば…
  日本のおかしな構造を、みんなで言えれば…

 だからこそ、協力するべき。

… タテワリな患者会


いい医療を受けることは患者の権利
 ということは、「義務」も発生するべき
  負担を増やす? 医療レベル下げる? 税金の使い方かえる?
 みんなで日本のこれから、医療のこれからをどうするのかコンセンサスを作るべき

提案中の医療政策
セカンドオピニオンに診療報酬を
  医者にもインセンティブは提供すべき

医療関係者・行政のプラスにもなる、win-winを求めて行動するべき!!
それが、義務。


<山口建先生>

●静岡がんセンターができるまで● 患者満足度向上のために

医療に関して改善するべきは、
患者さん、ではなく

 市民・行政・医療のプロ

三者が、緊張感のある協調をするべき

例:疾病管理

1000名の集団
ガン体験者は25名
新規がん患者は4名
2.5名が命を落とす

 この人口構成のなかで、ひとりについて4名くらいが一生懸命頑張る
 それは、10%程度ということ
  「少ない」

一方で…

 男性の二人に一人
 女性の三人に一人
 
 がガンにかかる  これは極めて「大きい」
  →このような大きな声が、医療をかえるのに力があるだろう

静岡、人口は、120万x3くらいの大きさ

…東部には、高度先進病院がなかった 20〜30年間の課題であった
 市民、頑張っていた が、なかなかうまくいかず…

杉山国会議員・石川知事・山口 の三者が集まった

 山口は、国立がんセンターという研究中心の病院は作れた
 が、患者中心の病院をつくりたかった

→集まった役員8人  …7人がタバコを吸っていたり…

『患者の視点の重視』
  がはじめからあった方針
 
 cf)「患者の視点の尊重」が、厚生労働省が21世紀の医療の方針

コンサルタント
計画を医療の専門家に任せる必要があった
三菱総研 当時一番といわれていたので頼んだが、当時はまったくだめだった…
足を泥まみれにするような小さなコンサルを3社たのんだ →成功!

医師は山口一人であったが、看護師がはいっていた

八木さん
 計画の概要が流れた時に、小児ガン患者家族であり、骨髄の運動を頑張っていた

 あたまの中でかんがえていることと、現実が違うことを強く感じた!!
 
 小児ガンの三重苦
 ・医療費
 ・毎日通いたいが医療費が…
 ・奥さんが仕事をやめて、収入が半減
   そもそも若夫婦だから収入が少ない

→もともと小児病棟をつくらないという計画だったが、かえた
 市民もびっくり!
   行政は間違いを認めない集団なのに…

患者の視点
 患者さんの学びを重視し、
 患者さんに学ばせていただく  →よろず相談・患者図書館

 「心かよう対話」

Quality Improvement
 「患者・職員に学ぶ」

毎朝三つの会議
 情報共有をしっかりと!


◆まとめ
「患者の視点を重視した医療」の実践のために
 ・住民の声  我々は医療が遅れたところにいる、と120万人が一致した
    …バランスが重要
 ・そこに行政が答え
    …真摯に答えることが重要
 ・医療者が動いた
    …しっかり計画をたてることが重要
  →この三者の緊張関係が重要!!

「患者満足度の向上」のために
 ・医療者の計画・改革
 ・職員意識の向上
 ・患者の声に基づいた、改善
  →アピアランス
    成果が上がっているとはっきり見えることが、大切
    「期限までに」「outcomeを」


<<質問>>

● 公的病院に自分もいる
 理想的に聞こえるが、自己収支は?

→山口
 2年目 人件費もかさんでいる
 たぶん40億が、一般会計からの繰り入れ

●ひとつにまとまると、患者の代表の声はどこに聞けばいい?と将来なるだろう
 政府の審議会のためにも、どうすればまとまるだろう?

→山崎
 横断的に、共通できるのものはないかと考えている
 たとえば患者の権利法、など、興味のある団体だけ集まってネットワークをつくり、そのネットワークで話し合って、共通のコンセンサスをつくり、代表をつくればいいだろう
 全部の代表は、無理

●患者の視点の重視
  国立がんセンターと、静岡がんセンターの違いを知りたい

→山口
 国立、は、研究重視。それが使命
  それは、患者さんに優しくないことがある
  治験が終わったら移動してもらったり…

 静岡は、最後のケアまでやる
  patient oriented = 全人的医療

●年間40〜60億は巨大だろう…
 その赤字はどこまで許されるの?
 静岡がんセンターだけ、どこまで許されるの?

→山口

 静岡には4つの県立病院
 4病院あわせて、120億
 がんセンターは600床

 また、政策医療が中心!
 量子線治療もすればするほど赤字になるが、取り入れた。
  最後は、県民の判断だろう

●患者は、なかなか一筋縄ではいかない…
 患者を重視しすぎて医療者を攻撃しすぎた院長がいた

→山口
 月に2〜3例、非常に厳しいクレームが来る
 しかし、それ以外はすべてパーセンテージはいろいろ…
 しっかり調査を、医師からも患者さんからも、聞く
  患者さんの意見がきびしすぎることは、きちんと言う

●多くの不満の声は、静岡がんセンターの前の医療機関のこともあるだろう
 アクションは起こしている? センターの中でだけ対処している?

→山口
よろず相談に「どうしたもんか」と他院の相談。
一般論としては、医者としての付き合いから…
一例一例ケースを上げて、は、患者さんからの希望がない限りしない

●患者なのか、市民なのか?
 患者は医療を受けるもの。市民は医療費を支払うもの。
  後者の視点が欠けていないか?
  治療を受けるものばかりが税金を使うのに反対はおきるだろう

→山崎
日本国民には、医療をよくしたいというニーズがある
財源は、国民みんなで話し合うべき 話し合う場をつくるべき
政治家が決めるのではなく、国民が決めるべき!

●赤字について
 「治療成績と患者家族の満足度を評価の基準とする」はすばらしいだろう
 だが、診療報酬制度はそれに従っていないだろう
  報酬をどう思っているか?

→山口
患者家族の満足度は極めて当然だろう
だが、今の医療制度ではなかなかうまくいかない…
「良い医療」がそれぞれ違うのが、問題だろう

昔、高度先進医療をしている病院では一点12円にしてほしいと主張したりしたが…

WHOから、総合力で高い評価を日本の医療は受けているのだから、これを日本は育てるべき

ただ、4割負担は、反対。

●資源配分について
 小児病棟
   あの地域は医療過疎。結果美談。だが、政治的誘致という側面も
  東部に誘致するために、他のリソースをくった、といっては、意味がないだろう。

→山口
「政治的にやっては悪いのか?」
地域住民がもとめたということだから、悪いとは思えない

資源の効率的配分
 綺麗な言葉だと思うが、現実にうまくいっている例が日本にあるのか?
いい医療がほしい、と住民が主張したときにこたえることは、義務。

静岡のほかのセンターへの負担、は、一時期あったが、今はがんセンターができたからこそ、他にリソースが回るようになった。

例:静岡医療センターが、ガンの力を削った。

 高度先進医療をいきなり建てた、ら、それをモデルに他がついてきた!!

あえて言えば、静岡県は富裕な県…
 全国には広められないだろう…

しかし、国立がんセンターの半分の建築費、など、努力はしている。
 fullスペックのセンター or 小規模だけれどレベルが高い、という比較もできるだろう

●医療者の生涯学習環境が、日本では乏しい
 大学図書館があるならいいが、病院図書館では最新の本がなかなか手に入らない
 
 メディカルスタッフの生涯学習環境の整備をどう考えているか

→山口
際立って、は残念ながらない
看護師については、認定看護師が中心に勉強会をつくっている
サポートチーム 横断的なテーマ別の他職種チーム医療
 そのなかに新しいものができるだろう

今は、お金をもらって海外にだして勉強させている
 国内にもだしている

●患者代弁者 山口先生自身がしているとおっしゃった?

→山口
代弁者(疾病管理センター)は、病院とは別組織。
病院に対しては言いにくいだろうから。
最初から苦情、は出にくい。よろず「相談」から発展してくる(看護師、MSW)
タイミングをみはからって、患者代弁者として行動させていただきます、と宣言し、記録をとり始める
 医療者をつつく
まとまったら、山口が動く 答える

疾病管理センターは、静岡の組織
 院長と対等
利点は、決着が早いこと
 病院の都合の左右されない

●いい医療、といったとき、病院環境にも左右されるだろう
 だが、純粋に医療的な面もあるだろう
  そのような当たり前の医療は、患者さんには判断してらいにくい
 医療そのもののレベルを上げるための努力はあるか?

→山口
患者の視点の重視 はひとつのポイント
患者がいやだといっても、それは重要なのだとしっかり言えること、大切。

医療レベルをあげることは、医療者の常識
例;
 科を横断した、密室にならないカンファ
 cure とcareの分離
   看護師の権限を上げた
 科の中でのさまざまな議論

 など。

 ⇒●患者になって医療を受けている間に、大切なものが変わってくる
   患者にしっかりとした医療を提供することは、大切
   
  →がん患者になった医療者は、がらりと変わる
   専門職として年月を重ねて、それから患者になると、がらりと変わる
   
   だから、 この調査をした
   患者さん7000人以上の声を聞いて、厚生省の支援をきいて、やった。


<<ディスカッション>>
・患者団体の存在意義
 数 が重要?

→山崎
患者さんが自分で発言し自分で決めるべき
自分たちのこと、として。
それが、国政に反映される。ただそれだけ

●政治家が患者になると医療は変えられる?
 それとも、患者が国会議員になるべき?

→山崎
県会議員・国会議員・国会に請願した団体にアプローチ、などなど頑張った
やり方は、人にきくとかではなく、必要に応じて手当たりしだい頑張ったら、ガンの政治家がいた

患者会の代表者を大学に送るべき
 社会的活動について、医療従事者は深入りしないとする
 大学で、肩を並べる機会があれば…

→山崎
いい話だとおもうので、あたってみるべき

●患者団体の攻撃性に、学生が宛てられるのが怖い

●攻撃性もある意味大切だが…
 文部科学省の検討会に、売り込んだ
 一年後、わすれたころに、検討会にはいるという問い合わせをいただいた

 そこに行って、両方の委員会から言われた
 「患者団体は怖くって、どうやって近づいていけばいいのかわからない」
 それぞれの団体にいって、話を直接聞いてほしい

 患者の親としてどんな想いがあるのか聞いてほしい
  聖路加で、じっくり聞いてもらえた
 
 怖い団体、怖くない団体、要望にあう団体、など、ある
 「こんな話しをしてほしい」と話し合うことも大切
 怖がっていては、一歩も進めない

→山口   ←「15の患者団体を入れた、考えは?」

患者ひとりひとりがどこまで意見をいってくれるか、不安だった。
だから、班会議にかならず出席してもらった

そうすると、専門家と患者団体が、戦いあう
話し合いの場を、医療者と患者さんとが話し合う場をつくるべき

ある団体が、「初めての機会だ、専門医に言えた」と涙を流して喜んだことも

『まずは、対話を』

●患者家族会
究極の目標は、それがなくなること。
問題がなくなれば、消えるのだから。

→山崎

今のような解釈でいい?

●状態によって、要求が違う
 発症間もない、これか治療、今治療中、治療終了、などなどなど

 まとめるの、たいへん。
 しかし、目標は一緒。
 
 政治組織をつくるべきではない
 しかし、連絡協議会的場所はつくるべき 患者の声をだす必要はある

●政治的な意味合いで、患者団体は必要ないと思う
 いろんな団体が集まって政治的な意味、はあるだろう
 各団体が、政治的な意味を持つことは重要でない
 
→山崎
政治結社
そのような形はおかしいだろう
しかし、いろいろなところと仲良くしましょう
政治、には悪いイメージがあるが、ひとがあつめれば政治はおこる

同じ問題に対しては集まって、よくしたいなというひとが集まらないと。
共通できる部分は、タテワリでなく横割りでいこう

数が集まらないと、変わらない
それは、いいこと。
一部の政治家だけで動かすのは、おかしい


患者の意見が入れば、政治は透明化する
ばらばらであった、患者。
文句しか言わない、という患者はだめだろう


●日本は間接民主主義
中医協 とか、正当な手続きが必要
正当性を持つためには、政治家になるべき。

→山崎
アンケートをおくるとか、いろいろできるだろう

中医協の立場から
 たしかに、法律上、事実だろう
 しかし、山崎さんのいうことは正しいだろう

 ひとつの声になかなかなりにくいのはあるだろう
 だから、いろいろなところに声をぶつけていくのは重要だろう
 
 法律を改正して、推薦しうる団体まで成長すればいいだろう
 そして、いい意見は、中医協も取り込みたい
 
 <現在の枠組みでできること>として、山崎さんの動きを前に進めてほしい

●<事例>
 クローン病潰瘍性大腸炎の患者団体
 政治的活動の有無の議論で、ばらばらになった
  しかし、患者も一応生活者
  署名、ビラ、など、家族がやめてくれといってきたりする
   日本人の政治へのアレルギー体質も考える必要ある

●「ガンにかかった医療者の治療はがらりとかわる」
 患者会にいけるのは、ある意味強者
 弱者が、言える環境が本当にあるのか。
 
 患者とのコミュニケーションという、非常に時間がかかることを、医者ができるのか。
 ガンにかかった先生の、効果的な指導を聞きたい

●山崎提案。これは、医者も同じこと感じている。製薬会社も同じこと考えている。
 しかし、攻撃しあっている。 →「怖い」
 製薬会社は、患者に動いてほしいという
   医者がいっても行政は動かない 患者がいうと、動く
 患者が協力することで政府は動かせる!
 
 山崎さん自身のポジショニングを考えられたら…
  もっとうまく動けるのでないだろうか

→山口
今日は講師の立場できているから、こわもて。
しかし、この場所では自分の主張を貫かせてもらった

・「マーチ(行進)」
 ガンの研究者と患者団体と病院関係者が、議論を重ね、要求した
 アメリカでは。

・がん治療学会などある
「がん患者団体」も将来はあるべき

専門の医療従事者をいれて、議論の場をつくることが、将来のひとつの目標になるのではないか

患者さんが政治団体を作れるかどうかは、実現可能なのかどうか、疑問


→山崎
例:CT買うときに、どっちの会社のをかうのかなんて、答えられない
ただ、患者の視点については患者が答えられる。ただそれだけ。

患者団体をつくって、そこから政治家をだそう、でなく、同じ願いを持つ人があつまって、それができている人を応援しよう、と思っているだけ。

これから苦労が大きいだろう、とは思う。
しかし、日本の医療をどうするか、広い視点にたって、世界の中の日本として考えるべきではないか

「この程度の国民にはこの程度の政治」といって批判がおきたことがあった
が、
「この程度の国民にはこの程度の医療」とおもう
いまの医療が落ちぶれているのは自分たちのせいだろうと、患者さんも自立して、行動するべきだろう
  「自分のことは自分でしましょう」「あんまり甘えないでください」

道のりは長いかもだが、そのためにお手伝いできれば…